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パチスロ 斜め揃い 社会やビジネスのデジタル化が加速し、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。「2025年の崖」を克服するために政府も声高に働きかけているが、中堅・中小企業においては情報システム部門の予算、人員ともに限られており、既存のITインフラ運用に手いっぱいで、新たなことに着手する余裕がないのが大方の現実だろう。

 解決策として、よく指摘されるのが「インフラ機器を棚卸しして、運用管理を効率化し、新たな取り組みに臨む余裕を生み出そう」というものだ。だが、これは言うほど簡単ではない。棚卸し自体が難しい上に、サイロ化した管理範囲、ブラックボックス化したノウハウにも悩まされることになる。

 かといって、課題を放置すれば現状は日増しに悪化し、企業競争力は低下する。ではリソースが限られている中で、運用を改善しながら新たな取り組みを推進するにはどうすればよいのか。アイティメディア統括編集長の内野宏信が、中堅・中小企業の取り組みを長年支援しているNECの櫛田慎哉氏(プラットフォームソリューション事業部 商品企画マネージャー)と下平康介氏(プラットフォームソリューション事業部 PFサービス販売推進マネージャー)に現実的な観点から話を聞いた。

中堅・中小企業のIT運用課題、その真因とは

内野 社会全体でデジタル化が加速し、「ビジネスとITは直結している」という認識はだいぶ浸透したと思います。しかし、ITの運用課題や情報システム部門の立ち位置は変わっていない例が多いようです。中堅・中小企業の情報システム部門の実態をどうご覧になっていますか。

NECの櫛田慎哉氏

櫛田氏 現在の情報システム部門の業務実態は大きく2つに大別できると思います。1つは情報システム部門が専門職化されており、高スキルの方を雇用してシステム更新を行う形です。しかし離職率が高く、担当者の退職後に運用改善やメンテナンスに支障をきたしてしまうケースが増えています。もう1つは、兼任の方がシステム維持管理に忙殺されてしまい、システム自体の改善や刷新に着手できないケースです。

 両方に共通する課題は「システムの継承性」です。ノウハウが属人化し、システムを継続的に改善できないため、コストを下げることができず、ITによる経営貢献も難しくなってしまうのです。

下平氏 情報システム部門をコストセンターと見なす傾向が強く、IT人材獲得の予算を確保しにくいという事情もあると思います。サーバなどのIT資産を長く担当されていた方が退職すると、ブラックボックス化したサーバだけが残され、誰も手を付けられなくなってしまう。

NECの下平康介氏

内野 属人化を生み出す真因は何だと思いますか?

櫛田氏 クラウド活用や利用デバイスの増加に伴い、システムが複雑化、多様化していることが挙げられると思います。働き方改革やコロナ禍などでさらにこの動きが加速しています。限られた人数で運用を行う中で管理対象が増えていけば、属人化せざるを得ない部分が出てきます。一度、管理する仕組みを作っても、仕組みを改善する余裕も継続性もないので、負担が増えていく悪循環に陥ってしまう。

下平氏 「Windows」のパッチ管理や、サイバー攻撃対策なども複雑化、多様化という点では同じことがいえると思います。国やベンダーはベストプラクティスやガイドラインを示しますが、中堅・中小企業では少人数の担当者でそれらを一身に受けざるを得ないのです。

内野 なるほど。情報システム部門が「一方的に要請を受ける立場」になりがちなことも問題なのでしょうね。目的抜きで、要望と期限のみ伝えられるため、資産導入も場当たり的にならざるを得ない。これもインフラの複雑化を招き、ブラックボックス化に拍車を掛けているように思います。本来なら、情報システム部門と経営層、事業部門との関係性から見直すべきなのでしょうね。

課題解決のアプローチ、「見える化」「標準化」「定量化」

内野 とはいえ、今解決しなければならない課題は山積しています。運用効率化は「棚卸しから」というのが定石ですが、これができないが故に悩んできたわけですよね。

アイティメディアの内野宏信

櫛田氏 そうですね。ただ、解決のアプローチはいつの時代も変わらないと考えます。すなわち「見える化」「標準化」「定量化」の3つです。「見える化」は、管理している機器の全体像を把握できるようにすること。属人化しないように誰が見ても分かる状態にして、皆が共通認識を持って全体を見ながら問題点を洗い出し、その改善策を見つけやすくすることです。

 「標準化」は見える化した機器を運用するための仕組みを作ること。運用ポリシーやプロセスを定義することで、担当者が変わった場合も運用を引き継いでいけるようにします。「定量化」とは「業務にどのくらい工数がかかっているか」を数値で表すこと。効率化の効果を経営層に示すことで理解も得やすくなります。

 ただ、こうした取り組みは本当に大変で、少人数化している情報システム部門ではなかなか進みません。そこで「取り組みそのものを自動化する」ことが重要です。例えば機器情報を自動で収集して、環境が変化したら情報更新も自動で行う仕組みを作る。管理も「拠点ごとにどの機器があり、どう利用されているか」をダッシュボード上で誰でも把握できるようにする。さらに、次の打ち手を検討できるよう、把握した情報を分析して継続的に運用改善の取り組みを行っていく、といった具合です。自動化を第一歩にして、運用効率化を進めるとともに、データドリブンな意思決定ができる環境も整備していくのです。

運用の自動化でシステム継承性の課題を解決する「NEC ICT Management Service and Technology」

内野 なるほど。「システムの継承性」を運用の自動化で乗り越えるアプローチは確かに魅力的です。しかし、構成機器情報を収集するツールは以前からありましたし、収集できてもCMDB(構成管理データベース)を作れない、更新できないという課題もありました。NECの場合はどう進めるのですか。

櫛田氏 「NEC ICT Management Service and Technology」(以下、MAST)というサービスを提供し、シームレスなITインフラ運用を支援しています。MASTには「ICT機器可視化基盤」というサービス共通の機能があり、機器のデータ情報を自動で収集、見える化し、管理できる情報に置き換えます。具体的には、エッジサーバを1台お客さま環境に設置するだけで、各種IT機器に特別なエージェントプログラムをインストールすることなく、自動収集した情報をダッシュボードで一元管理できます。

MASTはICT機器のログデータを自動収集/見える化し、属人化などによるシステムのブラックボックス化を抑制する 運用業務の標準化、突発的な障害への対応などを包括支援する(提供:NEC)

内野 機器情報はどの程度カバーできるのですか?

下平氏 Ping監視というネットワーク接続機器に標準的に備わっている機能を使ってエージェントレスで情報を収集しますので、NEC製品に限らず、ネットワーク機器やサーバ、ストレージ、PC、モバイルデバイスなど、マルチベンダーの幅広い製品までカバーできます。

櫛田氏 その後の「標準化」については、各種「運用サービス」を提供しています。NECが培ってきた運用ノウハウを基に、「標準的な運用ポリシー」としてプロセスを整理したものがあります。これをお客さまのインフラに適用して自動実行します。

「ITインフラ運用サービス」と「価格体系」(提供:NEC)

内野 「標準的な運用ポリシーを基に運用を自動化する」というと、運用アウトソースとの違いが気になります。「丸投げ」というブラックボックス化の原因になるようにも思いますが。

櫛田氏 おっしゃる通り、一般的なアウトソーシングサービスでは事業者に任せるため、ブラックボックス化しがちです。しかし、MASTは自動化プロセスを“お客さま自身が”運用サービスとして活用しますし、「各プロセスの中身がどうなっていて、どう自動化されているか」も公開する点が大きく違います。

内野 つまり主体は企業側にあり、自動化プロセスを自ら把握、統制できるのですね。

下平氏 はい。また、お客さまから許可をいただければ、見える化した情報をNECや販売パートナーが確認することもできるため、情報システム部門が少人数で運用が不安な方にも安心して利用いただけると思います。さらに特徴的なのは「自動化したプロセスによってどれほど効率化できるか」を定量化できることです。例えば、MASTでは「Windows 10パッチ管理サービス」を用意していますが、パッチ適用プロセスをお客さまにオープンにしながら約70%の作業を自動化できます。この他、「1日かかっていた障害対応を1分で完了できるようになった」など数値で成果を把握し、次の改善に生かすことも可能です。

販売パートナーと共に、運用管理のデジタル化とDXを支援

内野 なるほど。“丸投げ”とは全く違いますね。ただ、企業側には明確な目的意識、課題認識があることが前提になります。そこが曖昧なケースも多いと思いますし、導入や改善の工数にも懸念があります。

櫛田氏 だからこそ、まずは企業経営を支える基盤であるITインフラの見える化からスタートし、NECが用意した自動化運用プロセスをお客さまと共に考えながら、段階的に実装していくこと、迅速に進めていくことがポイントとなります。昨今のクラウド型IT運用サービスは各社ポリシーがさまざまなため、どのような形で運用するのが良いか迷うことも多いと思います。特に、これ以上の工数の増加は避けたいですよね。その点、MASTなら最初にエッジサーバを導入するだけです。見える化された機器情報や稼働データをNECが分析して必要な運用サービスを割り出すことで、お客さまに合った「最適な運用」を支援できます。

下平氏 運用サービスは、各業種の顧客課題を深く知る販売パートナーと共に開発、提供していることも強みですね。2022年3月現在、約10社と協力しており、サポートも含め販売パートナーと連携し、常にお客さまに近いところで解決策を提案できます。

内野 データを通じてお客さまに「伴走する」イメージなのですね。運用業務の定量化は、成果を顧客企業の事業部門や経営層に理解してもらう上で有効だと思います。ではさらに踏み込んで、情報システム部門の経営貢献についてはどうお考えですか。

下平氏 定量化は新サービス開発などの売り上げ貢献にも役立つと思います。MASTはPOS端末や複合機、エッジバイスなどの情報収集も可能です。こうした収集機能と販売パートナーのデータ分析ソリューションを組み合わせることで、例えばサービス業ではフロントのPOSレジや施設内に設置したタブレット、顔認証システムなどのデータとお客さまの趣向などのデータを組み合わせて、食事のおすすめメニューや、ショッピング情報などをお客さまごとにカスタマイズして提供するといったこともできます。顧客体験のデジタル化は今後当たり前のように進んでいきます。それに伴い、接点となるデジタル機器からの情報収集がMASTによって速やかに行えれば、よりタイムリーに新たな顧客サービスを提供できるようになるでしょう。

内野 なるほど。ITインフラの見える化、定量化とは、ITインフラが支えるビジネスの見える化、定量化にもつながると。確かにITとビジネスの相関関係が分かれば、DXは進めやすくなりますし、経営層のITに対する認識も大きく変わるかもしれませんね。

櫛田氏 そうですね。DX実現のためにはITインフラ運用業務のデジタル化が必須ですし、見える化、標準化、定量化はその第一歩となるものです。「これまでできなかったこと」を解決した上で、お客さまと共に継続的なデジタル化に取り組んでいきたいと考えています。

下平氏 DXという点では、収集したデータをいろいろな価値に転化していくことが重要だと思います。その点、販売パートナーとタッグを組みながら、包括的に支援できるのがNECの強みです。データドリブン型ビジネスを実現できるよう、親身になって伴走していきたいと考えています。

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